漫画はとっても繊細なもの/今回の私の失敗
初めに書いたように、今回、私は持ち込んだネームに内心自信がありました。それは、自分の中では企画も良いと思ったし、キャラクターも自分にしては立ったと思ったし、ストーリーラインは作画の方と綿密に計算して、きちんと構成出来た、キャラクターの感情線が引けたと思ったからです。
けれど、全然ダメだった。私が信頼する編集者の方には、大きく、
1.企画やイントロで期待したキャラクターの期待値を全然超えていない。
2.テンポが絶望的に悪い。
3.やはり、原作付きでギャグをやるのは難しい。
という指摘を受けました。
そのメールをいただいた時は、ショックでしばらく脳みそがフリーズしていましたが、私はその編集者の言葉で致命的なミスをしたことに気づきました。
今回、私はその企画を、元々は少女漫画の原作として描きました。20代の女性が読んで面白いようなラブコメです。プロットの段階では、面白いという評価をいただきました。
これが漫画の本当に繊細で難しいところですが、その段階で、本来ネームを描いてくれるはずだった少女漫画志望の方が、急な予定で作画出来なくなりました。
わたしとしては、どうしても形にしたい原稿だったので、思い切って方向転換をして、ギャグ漫画を描く方にネームを打診しました。
こうやって後から冷静に書くと、「なんでそんな無茶をするんだよ!!」と自分でも自分に突っ込みたくなりますが、そのギャグ漫画を描く方はとてもネーム力があり、面白くまとめてくれたので、「これは行ける!」となり、ネームの推敲を重ねました。
結果は、先ほど書いた通りです。
私の分析では、やはりその作品は少女漫画の作品なのです。少女漫画のカテゴリーで、ラブコメだからこそ活きていた良さが、ギャグ漫画になった途端、予定調和の、ぬるい作品になってしまったのだと思います。
というところまでを、とっても痛い心の奥を覗きながら、自信を失いかけながら、分析しました。そして、納得しました。ので、気にしないで、少女漫画家でネームをやってくれる人を探すことにしました。もちろん、そのギャグ漫画を描く方にはお詫びしました。
というところまでを、皆さんは3日で出来るでしょうか? 私は、自分が10代だった頃、20代だった頃を思い返すと、出来ていませんでした。折れて、3か月や半年はあっという間に過ぎ、またどこかで面白い作品にインスパイやーされて、ゼロベースで次の作品を作っていた気がします。
私が知っているプロの漫画家さん、小説家の方々は皆、リテイクをします。それはそうです。出来た原稿が一発でOKをもえらえるほど、この世界は甘くありません。編集者の方は、時に意地悪に思えるほどに色々な要求をします。けれど、これは「売れる」漫画や小説を作るためです。きっと漫画家さんや小説家の方々も、折れそうになったり、心の中が傷だらけで打ち合わせから帰る日々だと思います。けれど、彼らは折れません。何故ならば、プロだからです。
プロフェッショナルというのは世間的には聴こえは良いですが、つまりは「覚悟を決めた人」です。「自分はこの世界で飯を喰っていく。だから、どんなことがあっても折れないし、前に進む」という覚悟を決めた人です。なので、ブラッシュアップすると、時に信じられないぐらい素晴らしい作品を作ります。
みなさんはもう、創作の世界に足を踏み入れたのですから、プロの漫画家や小説家ほどの覚悟はないにせよ、折れず、たゆまずに努力を続けるべきです。
少し冷たい言い方のようですが、折れやすい、繊細な方はこの世界には向いていません。例え少々ストーリー作りが上手かろうが、会話文が上手であろうが、すぐに折れてしまう人は、プロの世界で飯を喰っていくと思わない方がよいと思います。
私は、どうしても面白い作品を作りたい。なので、痛くても痛くても、立ち上がって前に進みます。39歳の無様なおじさんだと言われてもへっちゃらです。ガリガリ君を食べていると、世の中のたいていのしんどいことはやりすごせます。あと、レッドブルを飲んだ後にガリガリ君を食べると、テンションが上がる気がします。お互い、がんばりましょう!