8ページでも上手に切り取れば壮絶な戦闘シーンを想像させることができる
以前、漫研コミュというサークルで生徒さんと8ページ漫画だけを作っていたことがありました。その時に、ファンタジーで、壮絶な戦いを経て主人公がヒロインにプレゼントを渡すという漫画を描いた生徒さんがいました。そもそも、8ページでは普通に描けばファンタジーの世界の説明だけで終わってしまうページ数です。その生徒さんは、世界の説明・壮絶な戦闘シーン・ヒロインに会ってプレゼントを差し出すシーンすべてを描いたので、8ページはあらすじを追っているだけのものになってしまいました。しかし、これも構成・切り取り方を工夫すれば8ページで充分描くことができます。
私だったら、イントロを大ゴマで、主人公がヒロインに会い、かしずくシーンを描きます。主人公は傷だらけで、返り血を浴び、刀もグニャグニャに曲がっています。このコマを渾身の力を込めて描き込みます。読者は、そのコマ、その主人公の状況を見れば、実際には描かれていないけれど、きっとここにたどり着く前にすさまじい戦闘をして来たのだろうと想像することができます。想像の余地のある漫画はとても良いものです。そして、そこから主人公がヒロインにプレゼントを渡すシーンのみをクローズアップして描きます。
これが、物語を切り取るという考え方です。
先に紹介した森薫さんの「昔の水着」は、8ページ漫画にもかかわらず、山場は見開き2ページを1コマで描いています。構成力と切り取る力、そして想像の余地を描くことで、こうして短いページで多くの内容、面白さを読者に伝えることはできるのです。
特に若いみなさんは、最初にも言ったように、起承転結で問題を起こし、解決するのが苦手です。ですので、こういう8ページ漫画をたくさん作って、構成力・演出力・読者に想像させる力を身に着けて、それから勝負の40ページを描いてもよいのではないかと思います。
ぜひぜひ、がんばってください。