COLUMN

18歳からの漫画の描き方

vol.22

「問題の解決/主人公の成長」がみなさんの漫画を難しくしていませんか?

自分で締め切りを作る

そこで、自分で締め切りを作るのはどうでしょう? 先ほど言ったように、○月○日に原稿を完成させるというだけでは、大した強制力になりません。きっとその日までに原稿は間に合いませんが、自分の中で何か言い訳を作って「今回はしかたなかった」で終わりです。
そうではなく、もう少し小刻みに締め切りを作ってみてはいかがでしょうか?
例えば、3日間で企画を立てる。その後、たとえもっと良いアイデアが出そうになっても、その3日間で出たアイデアで投稿作を作る。
繰り返しますが、プロは、そうしているのです。なので、そうしませんか?

そして、出来た企画からストーリーやキャラクターを起こして行く。この場合も、キャラ表制作には3日間、ストーリー作りには1週間といったように、タスクを細かくして締め切りを設けるとよいと思います。
ここでもやはり、ルールとして、後から出た良いアイデアは次回作にとっておくとして、とにかく自分が決めた締め切り通りに原稿を進めるというのが大事です。

そして、ネーム。ネームは2回のリテイクがベストだと言うプロの漫画家の方が多いですが、例えば、初稿のネームは3日間で上げる。それを直すリテイク1は3日間、最後の修正リテイク2も3日間といった具合いです。その後の作業も、じゃあ、下描きは何日間、ペン入れは何日間といった具合いに進めます。そうすると、みなさんは自分で満足いかない部分はあったにせよ、とりあえず自分が決めた期日までには原稿を仕上げることができます。このように原稿を確実に上げていく生徒さんは、やはり上手くなっていきます。
以前、編集者の方に、プロの漫画家の画面、原稿でお金が取れる画面になるまでにはだいたい300ページぐらいは真剣に描かなければならないと教えてもらったことがあります。自分の満足の行く作品を半年や1年で1本かけると、300ページ(だいたい10本ぐらい)描くのに5年や10年はすぐに経ってしまいます。

誤解を恐れずに言えば、最初の10本は多少内容がベタだろうと、キャラクターの配置が若干変だろうと、ストーリー構成でミスがあろうとよいのです。
そういうことは、原稿料をいただき、掲載が前提の原稿を描くようになってから編集者さんと一緒に考えればよいと思います。

すいません。それは言い過ぎで、4作めぐらいからはそういうことも考えた方がよいとは思うのですが、私がこの12年間見てきた漫画家志望者の方は、9割は描く前にあれこれ考えすぎます。そして、あれこれ考えて描くのを止めてしまうパターンがとっても多かったです。なので、ほとんどの生徒さんには、「まず描いて!」と言います。
たまに、本当に何も考えないでどんどん投稿作を作るので、「ちょっと考えて描こうか」という生徒さんもいますが、それはとても例外的です。

「問題の解決/主人公の成長」がみなさんの漫画を難しくしていませんか?

私は現在、高校に漫画を教えに行き、高校生と漫画を作ったりもします。また、専門学校に勤務時代は主に18歳の高校を卒業したての生徒さんと漫画を作ってきました。現在、いるかMBAで比較的大人の方と漫画を作っていて感じる一番大きな違いは、年齢が若ければ若いほどストーリーを「起承転結」でまとめるのが苦手で、年齢を重ねれば重ねるほどストーリーを「起承転結」でまとめるのが上手になるということです。これは、人生経験の差で、「話を要約する能力」の問題だと思うのですが。高校生で、起承転結で破たんなくストーリーを構成できる生徒さんはほとんどいません。なので、私が「お話おじさん」として一緒に起承転結で物語を作るのですが。

「起承転結」という言葉はみなさんも聴いたことがあると思います。
起が起こり。物語のイントロです。主人公やヒロインのキャラクター紹介、イントロの状況を説明して、たいていの場合「きっかけとなる事件/問題」が起こります。
承はそれを受けて、主人公が物語の中で明確な目的を見つけ、行動します。(ここが主人公の成長の下地になります。)
転は物語のクライマックスです。主人公が今まで出来なかったことをがんばって遂行し、問題を解決する部分です。読者を上手に感情移入させている場合、読者はここで興奮したり、感動したりします。主人公の成長がありありと見えるところです。
結は後日談です。問題を解決した主人公が、その場から旅立ったり、物語のイントロのドタバタが繰り返されたりします。

さて、当たり前のように必須だと言われている、この「起承転結」で物語を要約する能力、プロの漫画家になったらとても大事な技術なのですが、若い初心者の漫画家志望者の方にとって、本当に必須の能力なのかなぁと最近疑問に思っています。と言うのは、まず、先ほども言ったように、若い方がストーリーの中で問題を起こし、解決させるのはとても難易度が高いからです。実際に高校生や若い専門学校生は、ここの部分で良いアイデアが浮かばずに挫折するケースが圧倒的に多いです。主人公の成長も同じで、こちらの方がまだ問題の解決よりも作りやすいですが、初心者が作る主人公の成長はとってつけた感が強いので、たいていお話がベタ(どこかで見たことがあるような、誰でも思いつけそうなもの)になるケースが多い。
私は、若い漫画家志望者の方が挫折せずに最初の5作ぐらいを作るのには、思い切ってこの難易度の高い「起承転結」と「主人公の成長」を切ってしまってもよいのではないかと思っています。

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