COLUMN

18歳からの漫画の描き方

vol.21

自分で締め切りを作る勧めとストーリーを短く描く勧め

人生は長いようで短い/短いようで長い

こんにちは。みなさんはご機嫌うるわしくお勉強やお仕事や漫画創作に励まれていますでしょうか? 私の方は、先週夏休みをいただきまして、このコラムを書くのが3週間ぶりぐらいです。1週間お休みをいただくと、脳みそもよい具合いにリフレッシュされて、楽しくお仕事ができています。
私は現在39歳なので、きっとみなさんよりも10~20歳ぐらい年上だと思うのですが、人生に対する私の感想を述べると、人生は長いようで短い(ほんのこないだ、高校を卒業したような気がしますが、もう20年経ちました)、短いようで長い(例えば今日の午後は割りとゆっくりなので、ぼんやり漫画を読んだり、卒業生と電話で話したりとのらりくらりと時間を過ごしています)です。
みなさんは、ご自分の人生に対して、どのような時間の感覚を持っていますか? きっと、同じような感じなのではないかと想像するのですが。

プロには必ず締め切りがある

さて、今日の本題は、プロの漫画家・小説家・脚本家には、必ず締め切りがあるけれど、私たち漫画家志望者・小説家志望者・脚本家志望者には締め切りがないということについてです。
この違いは、大変大きなことだと思うのです。プロの漫画家になると、学生の夏休みの宿題などと違って、締め切りを落とすと編集者・編集部からの信頼を一気に失ないます。よほどの大御所や人気作家であれば、それも許されますが、中堅以下の漫画家であれば、次の仕事をいただけない可能性が高くなります。漫画家の恐ろしいところは、お仕事をいただいていない時は無職と同じなので、生活をしていくうえで、それはとても切実な問題です。
なので、漫画家さんはたとえ徹夜だろうが、キャラクターの感情線が多少ブレても、期日までに原稿を仕上げます。その辺りのドタバタは大変ドラマチックで、多くの漫画家さんが締め切りや編集者とのやりとりを題材にした漫画を描いています(個人的には島村和彦さんの「燃えよペン」(竹書房)が一番好きです)。
この、「キャラクターの感情線が多少ブレても」がポイントです。これが漫画家志望者だったら、自分が納得のいくところまで直せばよいのですが、プロの漫画家は常に締め切りを意識して物を作るので、特に作画やアシスタントさんたちのスケジュールを考えると、「これ以上こだわると原稿を落とす」という意識が働きます。私はこれが、漫画家の能力を最大限まで引き出す仕組みかなと思います。火事場の馬鹿力という言葉があるように、人間は本当にぎりぎりになると普段よりも何倍もの力が働くものです。
「キャラクターの感情線がブレている」という意識の中で、プロの漫画家は原稿を描きあげながらなんとかその部分を修正しようとします。ものすごい空中戦になります。けど、それによって原稿は確実に一段階クオリティが上がり、読者が納得のいくドラマになります。
一方、我々漫画家志望者はこの最後の、火事場の馬鹿力が存在しません。今日原稿を上げないと仕事がなくなるという危機感もありませんし、原稿を仕上げてもとくに何がある訳でもありません(コミケやコミティアのような同人誌イベントが素晴らしいのは、このような締め切りが設定できるところです)。だいたいにおいて、人間の意志はそう強くありません。外からの強制力や自分の中での工夫がないと、この日までに原稿を上げるという目標はなかなか達成できません。

必須項目を入力のうえ送信してください