COLUMN

18歳からの漫画の描き方

vol.06

再説:鈍感になってください!

前回のコラムで、僕はみなさんに「鈍感になってください」と言いました。上記のように、まだ10代・20代のうちは人生経験が少ないので、テクニックで物語を創作する事はとっても難しいのです。また、感受性が豊かすぎることが、描いているものが生々しすぎることが、感情をコントロールして物を作り上げることをとっても難しくしています。なので、まず最低限、鈍感になりましょう。

描いている途中は、自分が描いているものが面白いのか、面白くないのかを気にしない。

今まで沢山見て来ました。せっかく80点ぐらいの物を作っているのに、制作途中で友達に「これ面白いと思う?」と見せ、「(井上雄彦と比べたら)面白くない」と言われ、やる気を失い挫折する生徒さん。友達の評価はある意味当たっていますが、僕たちは3年後、18作後に本当に面白い漫画を描ければよいので、自分が描いているものが面白いかどうかは特に下描き以降は一切考えないようにしましょう。念のためですが、企画作りやプロットやネームの段階で、自分の作品を面白くする工夫や努力はもちろん必要です。そうしないと描いている作品はとっても独りよがりなものになってしまいます。しかし、誤解を恐れずに言えば、僕の経験則ではほとんどの漫画家志望者は面白い漫画が作りたいので、放っておいても面白くする努力はします。なので、気にしないぐらいのスタンスがちょうど良いと思います。

どこか変でも描き切ってしまう

前回のコラムでも書いたのですが、プロの漫画でも、週刊・月刊の連載の中で上手く行った回と上手く行かなかった回というのは必ずあります。『マンガ脳の鍛えかた』(門倉 紫麻 著/集英社) の中で本宮ひろ志さんは、作品の3本に1本が面白ければ充分だと言っています。プロは必ず締め切りがあるので、明らかに失敗してしまった回や、失敗してしまったシーズンであっても、作品が完結するか、打ち切りになるまでは描き続けなければなりません。もちろん、そうならないために漫画家は編集者と一緒に頭がねじ切れるぐらい考えるのですが、プロがやってもそれぐらいの確率でしか上手く行かないのが漫画です。いわんやみなさんをや、です。漫画家志望者の原稿で、完璧なもの(何を以て完璧なのかについてはまた後日お話しましょう。)を作り上げることはほとんど無理です。どこか、ストーリーラインがベタだったり、繋がりの薄いエピソードを入れてしまったり、キャラクターの感情線の流れが強引だったりするものです。そういう色んな要素のうち1つでも変だと原稿を止めてしまいたくなる気持ちは、とってもとってもわかります。が、そこは我慢して描き上げてください。みなさんが今描いている作品は、18本分の1本なのです。18本めに最高に面白いものが描ければよいわけですから、どこか変だと思っても、自分の中での締め切りが来たら次の行程に入る鈍感さが必要だと強く思います。

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