COLUMN

18歳からの漫画の描き方

vol.04

鈍感になってください!!

もちろん、漫画教室や通信添削指導を受けた人が100%プロの漫画家になれる訳ではありません。半分以上の方は、残念ながらプロの漫画家に成る前に漫画を止めてしまいます(先ほど言ったように、ご自身で納得して漫画を描く事を止めるのは、とても良いことだと思います。漫画でご飯を食べ続けていくのは、本当に不安定な事なので。)。漫画を描き続けられる人、途中で挫折してしまう人の差は、「自分の作品にどれだけ鈍感か」が一番強い要素な気がします。プロに成る前の漫画家志望者のセンス(才能ではありません!!)なんてたかが知れています。絵が上手で、コマ割りも上手、お話のセンスもあるしキャラクターも魅力的なものが作れても、自分の作品に敏感すぎてどうしても作品を仕上る事が出来ない生徒も沢山おりました。逆に、絵は下手だし、コマ割りも単調、お話もキャラクターもいまいちであっても、ゴリゴリと描き続ける生徒もおりました。3年後、どちらが上手くなっているか、どちらが商業誌のフィールドに立てるかと言えば、後者です。

1作めの作品は、顔漫画でよいのです。コマ割りがいくら単調でも、お話がいくらベタでも構いません。持ち込みに行けば、それは編集者の方にぼろくそに言われると思います。賞を取ったりデビューをしたりすることはまだ無理だと思います(それでプロに成っても困るのは自分です)。けれど、どんな漫画であっても、1作仕上げた事には変わりありません。
僕はみなさんに、それを3年間で18回続けて欲しいのです。それには、鉄の意志が必要です。みんなが遊んでいる時、眠っている時、居酒屋で漫画論を語っている時、常に机の前で原稿をカリカリ描く事になります。そして鈍感であり続ける必要があります。一人カリカリ描いていると、自分の描いているものが面白いのか面白くないのかわからなくなってくるし、あそこをこうすればよかったみたいな部分は必ず出て来ます。けれど、描き続けてください。考えてみれば、みなさんがなりたい、プロの漫画家という職業はそういうものなのです。
プロの漫画家には必ず締め切りがあるので、毎回満足しながら原稿を仕上るという作家はいません。みなさん、「今回は完全に失敗した」と思っても、それをいかに商業レベルに引き上げつつ修正するかでシノギを削っています。

東村アキコさんは「かくかくしかじか」の最終回で、こんなモノローグを書いています。

漫画ってのはとにかく 1ページに何度も同じ顔を描いて 背景を描いて 1話で何十回も何百回も人間描くわけで しんどくてもとにかくひたすら量を描くしかないと 地道に描いて白い画面を埋めていくしかないと でも私はあの日々のおかげで しんどくてもなんか 描ける 辛い時も 悲しい時も 風邪引いてても 熱があっても ムカつくことがあっても イライラしてても 自分の漫画が面白くないって言われても 絵が下手だと言われても アンケートが悪くても 単行本が売れなくても 地震があっても 東京が真っ暗になっても…(中略)
先生 私 頑張るよ 負けないよ これからも描き続けるよ だって描くしかないじゃん そのために生まれてきたんだもん 絵を描く人間はみんな そのために生まれてきたんだから 下手でもなんでも 描くしかないよ ずっと 死ぬまで ねえ 先生

東村アキコ 『かくかくしかじか』(集英社)

プロの、しかも実績もあり売れている漫画家さんがこの覚悟です。
さあ、みなさんはどうしますか?

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